アジアの時代:移ろいゆく経済覇権を巡って

G7サミット:主役は中国

英国のコーンウォールで、先進7か国首脳会議(G7サミット)が開かれた。コロナ禍のもと、2年ぶりに各国首脳が一堂に会する会議であり、その意義は大きなものがあろう。日本にとっては、東京オリンピック・パラリンピック開催の支持取り付けが最大の課題であったと思われるが、米国にとっては、G7を脅かすライバル・中国に対して、どのような対抗策を打ち出すかが最大の論点。サミットの主役は、「中国」であったと言ってもいい過ぎではないだろう。

世界最大の経済覇権を窺う中国


中国の2020年の名目GDPは14.7兆ドル(1,600兆円)で、米国(20.9兆ドル<2,280兆円>)の7割にとどまっている。もっとも、中国は米国よりも物価が割安であり、その分GDPが過小評価されている。その点を考慮して、両国の物価水準の違いを調整した「購買力平価(PPP)ベース」のGDPで比較すると、2017年に中国は米国を抜き、世界最大の経済大国となっている(図表1)。2020年には、中国は世界GDPの18%を占めている。

2017年といえば、米国のトランプ前大統領が、中国に対する「貿易戦争」をスタートさせた年である。対中国貿易赤字が増大し、中国の製造業に米国の雇用が奪われるとの産業競争力の観点だけでなく、米国の経済覇権を脅かす存在として、中国を本格的に意識し始めた年ということでもある。



世界史でみた経済覇権の推移


もっとも、米国が世界経済の覇権国家の地位を得たのは20世紀初頭であり、長い世界の歴史からみれば、ごく最近のことに過ぎない。

図表2は、英国の経済学者アンガス・マディソン(Angus Maddison、1926-2010)が推計した各国の購買力平価ベースのGDPのシェアを図示したものである。この推計結果によると、中国は、紀元1世紀から19世紀初頭まで、一貫して世界のGDPの25%程度のシェアを占めてきた。アヘン戦争以降、中国が欧米列強の半植民地と

なったことに伴い経済が衰退し、20世紀には5%未満のシェアまで転落したが、長い歴史でみれば、例外的である。中国のシェアは、2020年に18%まで回復しているが、過去の平均からみれば、まだ低い水準であるとも考えられる。


中国の対抗馬はインド

このデータからは、この2千年間において、中国の経済覇権に対抗できる経済力を有してきたのは、一貫してインドであることが読み取れる。インドは、19世紀に英国に植民地化されるまでは、概ね世界GDPの25%を占めてきた。紀元1世紀の頃はローマ帝国が、1000年頃はイスラム帝国が、18~19世紀は英国などの欧州列強が、20世紀以降は米国が、代わる代わる中国のライバルとなってきたわけであるが、インドは、2千年間、一貫して中国の対抗馬であり続けている。

こうした歴史を踏まえると、今回のG7サミットにゲストとして招待されたインド(コロナ禍でモディ首相はオンライン参加となったが)は、大きな潜在成長力を有している点も併せて、その存在を軽視することはできないだろう。


 

Writer:肥後 雅博 東京大学大学院経済学研究科教授・前日本銀行京都支店長 参考文献

アンガス・マディソン『世界経済史概観紀元1年―2030年』(政治経済研究所監訳) 岩波書店、2015年


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