デジタル化の進展と広告の変貌


デジタル化の進展とコロナ禍

近年、デジタル化の進展はめざましい。2000 年代初頭までは、パソコンがデジタル化の 主役となっていたが、2010 年代に入り、スマートフォンがその牽引役となっている(図表1-1)。実際、ネット上のあらゆるサービスがスマホで利用可能となっている。 <図表1-1 情報通信機器の世帯保有率>

図表1-1 情報通信機器の普及とインターネット トラヒック の増加 ー情報通信機器の世帯保有率

近年のもう一つの特徴は、インターネットでのデータ通信量の急激な増加である。図表1-2はデータ通信量の推移であるが、2014 年頃から増加ペースが目立っている。特に 2020 年春以降は、コロナ禍のもと、ネットのデータ通信量の増加ペースが一段と加速し、 前年を 50~60%上回る伸びとなっている。コロナ禍による巣ごもり行動は、テレワークの 普及、ネットショッピングの拡大、ネット動画サービスの視聴時間の増加などを通じて、 経済のデジタル化を急速に進展させている。 <図表1-2 インターネットトラヒックの増加>

デジタル化の広告サービスへのインパクト

デジタル化の進展は、経済活動に大きな影響をもたらしている。特に影響が大きい広告サービスについてみてみよう。

媒体別広告費の推移をみる(図表2)と、デジタル化の流れに沿って、ネットサイトやアプリ上の広告であるインターネット広告費が急激に増加している。2005年の3,800億円

が、2020年には約6倍の22,000億円に達している。特に2015年以降の拡大が目立っており、近年のデータ通信量の増加を反映している。一方、紙媒体広告の代表である新聞広告や雑誌広告は凋落が顕著である。2005年には1兆円を超えていた新聞広告費は、2020年には3,700億円と3分の1に、雑誌広告費も4分の1まで減少している。

さらに直近では、ネット広告は、メディア広告の王者であるテレビ広告の地位も脅かしている。ネット広告費は、2019年にテレビ広告費を逆転してトップに立っている。2020年は、コロナ禍のもとテレビ広告が大きく減少した一方、ネット広告は増加を続けており、両者の差は拡大している。ネット広告の内訳をみると、動画広告は、2017年の1,200億円から2020年の3,900億円へと急拡大しており、消費者はテレビからネット動画へ視聴をシフトさせている。 <図表2 媒体別広告費の推移(億)>


二極化する広告物価の動き

最近におけるネットとテレビの広告の競争環境の変化は、広告の物価指数からも確認できる(図表3)。上昇を続けてきたテレビ広告の料金(CM料金)は、2016年をピークに下落に転じており、2020年にはコロナ禍による景気悪化の影響で大きく下落している。一方、ネット広告の料金は近年上昇を続けており、テレビ広告の競争力低下とネット広告の競争力向上が目立っている。

ネット広告がなぜ高い競争力をもつのだろうか。一つの要因として、ネット広告では、閲覧の有無を確認できる場合が多いことに加え、消費者の視聴・閲覧の履歴や属性情報を利用するなど、ネットの双方向性を活用した、より効果的な広告戦略を打つことができる点が指摘できるだろう。データを活用した広告戦略の提供により、より高めの広告料金を広告主に求めることを可能としている。一方で、新聞、雑誌、テレビなど在来メディアの広告は、広告主へのサービス面で後れを取っている可能性は否めないと考えられる。コロナ禍が、ネットメディアへのシフトを加速させる一因となっていることは興味深い。

<図表3 広告の物価指数(2015年=100)>

(注)図表2の「テレビ広告」は、地上波テレビのみ(衛星放送は除く)。図表3の物価指数は、消費税除くベースである。



 

参考文献 サーバー・コミュニケーションズほか、 「2020年日本の広告費インターネット広告媒体費詳細分析」2021年3月10日

総務省「情報通信白書(令和3年版)」2021年7月・・・図表1

電通「2020年日本の広告費」2021年2月15日・・・図表2

日本銀行「企業向けサービス価格指数」・・・図表3 Writer:肥後 雅博 東京大学大学院経済学研究科教授・前日本銀行京都支店長

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